間取り図
少年は、
新聞の折り込み広告に入っている賃貸や新築物件の間取り図を見ているのが好きだった。
3LDK、4LDK....様々な間取りを眺めながら、
ここにソファを置いて...
ここに机を置いて...
などと空想するのが楽しかった。
ある時、そんな息子を見て母親が言った。
あなた、将来設計士にでもなったら?
すると、そばにいた父親がこう言った。
お前には無理だ。
母親は言った。
そんなのやってみなければわかんないじゃない!
その後、父親は何も言わなかった。
なぜ、無理だと言ったのか。
なぜ、無理だと思ったのか。
父親がその理由を話すことはなかった。
少年は、なにも言わなかった。
少年は、折り込みチラシを見なくなった。
少年は、大人になって(それなりに長い年月を経て)から、
好きなこと
楽しいと思えること
は、
大事に
大切に
しよう。
と、思うようになった。